理想を実現するのは大変そう
通常国会が始まり、冒頭で岸田首相の施政方針演説が行われましたが、全体の4割くらいが、新しい資本主義(首相の掲げる経済政策)の話しでしたね。
まあ、新しい資本主義は、岸田さんがこれまで力を入れてきた政策ですし、今後もそれは変わらないということなのだろうと思いますが、それが話しの中心になったことで、外交・安全保障の話しが2割くらいになり、
防衛力の抜本的強化や子育て政策については、ともに1割くらいとなってしまったのは残念でした。外務大臣経験者として、もう少し外交について時間を割いたほうが良かったような気がしますし、
得意分野ではないのかもしれませんが、今の世界情勢からすれば、防衛力の抜本的強化について。また、異次元の少子化対策という点で、子育て政策についても、
もう少し時間を割いたほうが良かったような気がしました…といった感じの施政方針演説でしたが、内容自体は、確かにその通りなのだろうと思いましたし、実現していかなければいけない政策だろうと思いました。
ただ、方針というのは理想でもありますからね。理想を実現するのは大変だろうと思います。例えば、新しい資本主義というのは、小泉内閣以降続いた新自由主義的な経済政策の行き過ぎた部分を是正し、
新しい社会を開拓することが狙いということらしいのですが、その小泉さんが首相に就任したのは2001年ですからね。それから20年も続いた経済政策を是正するというのは、かなり難しいと思います。
特に、演説にあった「構造的な賃上げ」については、是正のしようがないような気もするのですよ。「労働コストや生産コストの安さのみを求めるのでなく」とは言うものの、
低コストで人を雇えるように非正規の雇用を増やし続けてきた結果が今で、非正規雇用が労働者全体の4割にまでなっていますからね。ここまでになると、「非正規雇用の正規化」も掛け声だけで終わりそうです。
また、株価対策ということだと思うのですが、ROEという指標を重要視するようになったことも、賃上げを難しくしているような気がします。このROEという指標は、純利益÷自己資本で求めるようで、
この場合、ROEを大きくするには、分子の純利益を大きくするか、分母の自己資本を小さくするかということになりますが、純利益については、コスト削減という名の人件費削減で大きくなりますし、
自己資本についても、株主への配当を増やして利益剰余金を減らせば小さくなりますので、どちらにしても、従業員にお金がまわることはない(賃上げは無い)と思うのですよね…
といった中で賃上げを実現するための「三位一体の労働市場改革」(リスキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動)なのでしょうが、これもどうなのかなあと思います。
もちろん、新しい資本主義という政策が成功すれば、岸田首相の言うように新しい社会を開拓することになるでしょうし、そうなれば、岸田さんも歴史に名を残す首相ということになるのでしょうけどね。
また、外交・安全保障については、「G7議長国及び国連安保理非常任理事国の立場を活かし、世界の平和と繁栄に向けた取組を主導」ということですが、
こういう巡り合わせは大事にしたほうが良いと思いますし、演説の通り、いろいろな取組を主導してほしいと思いますね。(個人的には、今が安倍さんだったらよかったのになあと思いますが)
そして、安倍さんが重要視していた「自由で開かれたインド太平洋」についても、地域の平和と安定のために、枠組みを維持、発展させてほしいと思います。
あと、防衛力の抜本的強化と子育て政策についてですが、岸田さんは財務省寄りなのですかね。防衛費の増額については、税制措置によって不足財源を捻出することが既定路線になっているような気がしましたし、
また、子育て政策については、異次元の少子化対策と言いつつも、「意見を徹底的にお伺いするところから始めます」ということなので、こども政策担当大臣にお任せになるような気もしますね。
あっ、そうそう。一応、憲法改正にも触れていましたが、たぶん、文字にしたら100文字くらいしか話していませんでしたし、「より一層議論を深めていただく」ということでしたので、やる気はないと思います。
まあ、解釈改憲でなんとなかっていますし、その意味で、無理に改憲する必要もないと思うので、安倍さんもそうでしたけど、岸田さんも現実的な選択をしたということなのでしょう…
ということで、今回の通常国会こそ、政局で動く国会。スキャンダルを追及する国会ではなく、政策を議論し、実行していく国会になってほしいと思います。