思い込み、執着心が強く、自分の非を認められない人
先週、JR博多駅近くで女性が刺殺される事件がありましたが、こういう事件があると、1999年10月にJR桶川駅(埼玉県)近くで起きた、桶川ストーカー殺人事件を思い出します。
この事件は、ストーカー規制法が制定されるきっかけになった事件ですが、本当にひどい事件で、また、警察の捜査怠慢や、報道の在り方が問題視された事件でもあったのですよね。
当時の報道によると、被害者の女性(女子大生)と容疑者の男(殺害の実行犯が、男から女性の殺害を依頼されたという別な男で、かつ、男が逮捕前に死亡したため、加害者ではなく容疑者なのですね)は、
1999年1月に知り合い(男が女性に声をかけたらしい)、その後、食事をする程度のつきあいがあったようなのですが、そうした中、男が女性にブランド品を頻繁にプレゼントしたため、
それに違和感を感じた女性がプレゼントの受け取りを断ったところ、男は逆上し、また、それ以外にも、男に情緒不安定な面があったことなどから、女性は男とのつきあいに不安を抱くようになったそうです。
そして、同年3月になって男の態度が豹変したため、被害者の女性は、男に殺害されるかもしれないという恐怖心を抱き、遺書をしたためたうえで、男に別れ話しを切り出したそうなのですが、
それ以降、男は女性の家族に危害を加えることをほのめかすなどして交際を強要してきたため、女性は仕方なく男との交際を続けることにしたということです。
(男は、興信所を使って女性の家族や友人の情報を入手し、その内容を女性に開陳したということなので、女性の恐怖心は計り知れないものだったのではないかと思います)
ただ、当然のことながら、女性はそうした交際が続くことで心身ともに疲弊し、同年6月になって再度別れ話しを切り出したところ、男は女性宅に押し掛けるなど、ますます強硬な態度に出たようで、
女性は、ここで初めて地元の警察署に被害を申告したとのことですが、警察は、民事不介入を理由に取り合わなかったそうです。(警察に民事不介入の原則はありますが、この状況でそれはないですよね)
そして、男の行動はますます激化し、被害者の女性を中傷するビラ(女性の顔写真入り)を作成し、女性の自宅や通学先の大学、女性の家族の勤務先に数百枚ばらまくなどしたため、
再度、警察署に被害を申告したところ、警察からは、「告訴がないと捜査できない」と言われ、「では今日告訴する」と言うと、「もう少し先でもいいのでは?」と言われ、その日は帰らされたということで、
結局、それから半月ほどしてようやく告訴することができたそうですが、その告訴についても、後に警察から、「告訴を取り下げて被害届にしてはどうか」といったことを言われたそうです。
まあ、ひどい対応ですよね。報道によれば、告訴は地元の警察署から本部(埼玉県警)に報告しないといけないので、それが面倒で被害届にさせようとしたのではないかとか、
告訴をいったん取り下げると、同じ内容の告訴ができなくなるので、それを狙ったのではないかということなのですが、いづれにしても、警察の捜査怠慢というか、警察の不祥事と言っても良いくらいの状況だったようで、
その結果、女性は男の仲間の一人に殺害されてしまったわけです。(ただし、被害者遺族が起こした国家賠償請求訴訟で、警察の捜査怠慢と女性の殺害とに因果関係はないという判決が確定しています)
そして、その後はいつもの通り、マスコミが大騒ぎして被害者遺族を苦しめるということが起こったわけですが、ひどかったのは、遊び好きな女性が事件に巻き込まれたかのような報道があったことですね。
後の報道では、警察が、被害者の遺品の中にブランド品があったと報道機関に(具体的なブランド名を入れて)公表したことが、そうした報道の原因と言われていましたが、
このあたりについても、警察が、自分たちの捜査怠慢に目が向かないようにそうしたのではないかという話しがあって、何となくですが、たぶんそれが事実なのだろうという気がします…
といったことが桶川ストーカー殺人事件のあらましですが、この事件の翌年にストーカー規制法が制定されたものの、同種の事件は無くならないというのが現実のようです。
桶川ストーカー殺人事件の報道を見る限り、ストーカーというのは、「思い込み、執着心が強く、自分の非を認められない人」といった感じなのかなあという気がするのですが、
こういう人間に対しては、警察の対応にも限界があるということなのかもしれませんし、報道を見ると、今回の博多の事件の加害者も、こんな感じの人間だったのかなあという気がしますね。
また、博多の事件では、被害者の女性が、ストーカー対策として警察から貸し出されていた緊急通報装置を、事件当日もバッグの中に入れて持ち歩いていたそうなのですが、
通報するまもなく襲われたのか、緊急通報装置は使われていなかったということでした。(この装置は、ボタンを押すだけで、警備会社がGPSで位置を特定して110番してくれるものだそうです)
たぶん、機械に頼るとしたら、男女ともにGPSをつけてもらって、接近したら自動的に警報が出るような仕組みにしないとダメかもしれませんね。(人権派の皆さんが反対しそうな仕組みですけど)