家賃を滞納しても追い出せない?
先週、賃貸契約にある家賃滞納者の追い出し条項は、消費者の利益を侵害しているので違法という判決が最高裁判所で出たようですね。
まあ、滞納の理由や、滞納している期間にもよると思いますが、家を追い出されるというのは確かに大変なことなので、その意味で、店子(借主)の保護は必要なのだろうと思います。
ただ、大家(貸主)の立場からすれば、家賃滞納者の居座りは、本来であれば得られたであろう家賃収入が得られないということになるので、それはそれで大変だろうと思います…
ということで、ネットで関連する記事をいくつか見てみたのですが、それらを読む限り、今回の判決は、大家(貸主)と店子(借主)の関係についての判決ではなく、
大家(貸主)と店子(借主)の間に入っている保証会社と店子(借主)の関係についての判決だったみたいですね。判決文を読んでいないので、自分の勘違いという可能性もありますが、
読んだ中に、「家賃を2カ月以上滞納するなどの要件を満たせば、建物の明け渡しがあったとみなす保証会社の条項」が違法と判断されたといった内容の記事があったので、
恐らくは、大家と店子という賃貸契約の当事者ではない保証会社が、家賃保証をする際に、そういった条項を設けるのは違法ということではないかと思いました。
まあ、家賃保証をしているとはいえ、賃貸契約の当事者ではない保証会社が、賃貸契約の解除を求めたり、居室の明け渡しを求めたりするのは、確かに微妙と言えば微妙ですからね。
また、日本では、自力救済(司法手続によらず、実力で権利の回復を果たすこと)が認められていないので、それとの兼ね合いもあるような気もします。
そういうことをするなら、勝手にやらないで、ちゃんと裁判をして判決を得てからやってくださいというのが、本来あるべき姿ということなのでしょう。
そして、家賃保証というのは、借主が家賃を滞納した場合、借主に代わって貸主に家賃を支払いつつ、借主に対して立て替えた家賃の支払いを求めるという行為ですが、
後者の部分(支払いを求める行為)は、いわゆる取り立て屋のようなものですし、居室の明け渡しを求める行為も、言い方を変えれば、追い出し屋みたいなものですから、
裁判所の立場からすれば、そういう行為は、あまり認めたくないのかもしれませんし、そうしたこともあって、今回のような判決になったような気がします。
ただ、ではなぜこの世の中に家賃保証会社が存在しているのか…といったところにも目を向けないといけないような気もしますよね。例えば、個人経営のアパートみたいなところであれば、
大家さんができることも限られると思いますし、今は昔に比べて、人のつながりも希薄ですから、賃貸契約する際に保証人が見つからないという人もそこそこいると思うので、
それで家賃保証会社が必要になっている(存在している)ということもあると思うのですよ。必要がなければ、そんな商売は生まれていないと思いますので。
また、ではその家賃保証会社はおいしい商売なのか…といえば、必ずしもそうではないような気がします。もう随分前になりますが、リプラスという家賃保証会社が、
300億円以上の負債を抱えて倒産したことがあったのですよね。負債総額がそこそこだったのと、保証会社も倒産するんだなあと思ったのとで印象に残ったのですが、
この会社が行っていた、不動産ファンドのアセットマネジメント(資産の管理・運用の代行)がうまくいっていなかったという話しのほかに、家賃保証(レントゴー事業)も大変だったようで、
滞納された家賃の肩代わりも、相当の金額になっていたという話しもあったので、たぶん、家賃保証という商売は、相当のリスクを覚悟してする商売なのではないかという気がします。
また、ここで問題なのは、もし家賃保証会社が存在していなければ、家賃滞納による不利益は、貸主(大家)がもろにかぶっていたということですよね。
そして、そういうことが起こるとどうなるかと言えば、家賃を滞納しそうな人(信用の低い人)は、賃貸物件を貸してもらえなくなるということではないかと思います。
実際、過去には、シングルマザーの人が家を借りられないみたいな話しがニュースになったこともありましたからね。これなどは、大家(貸主)がリスクを避けた結果ではないかと思います。
また、今回のような判決が出ると、家賃を払わないで居座る店子(借主)も増えてくるのではないかという気がしますし、それが現実になると、ますます賃貸物件が借りづらくなると思いますね。
まあ、こうした問題をどう解決すれば良いのかは、自分にはわからないですが、行政が、何かしらのルールを作るしかないのかなあという気がします。
また、強制力を持たないルールですと、結局は居座った人の勝ちということになってしまうと思うので、ある程度のことは、司法手続きを経ることなくできたほうが良いような気はしますね。
自分も賃貸暮らしですが、保護してもらえるのはありがたいものの、それで物件が借りづらくなってしまうのは困ります。何事もバランスが大事ということかなあ。