サラリーマンの生涯賃金は右肩下がり?
昨日の昼休みに、同僚たちとサラリーマンの生涯賃金はいくらくらいか?といった話しになったのですが、金額はさておき、以前と比べて下がっているのではないかという意見が多かったですね。
まあ、確かに「上がらない賃金」みたいな話しはよく聞くので、実際に下がっているかどうかはともかく、少なくとも、上がっていることはないだろうといった感覚があるのだろうと思います。
また、90年代半ば頃には、「サラリーマンは生涯で3億円を稼ぐ」みたいな話しもあったと思うのですが、もしかすると、このあたりがサラリーマンの生涯賃金のピークだったのかもしれませんね。
ただ、当時と比べると、今は65歳定年に変わりつつありますし、生涯賃金も、その5年分を含んだものになっているはずなので、仮に下がっているとしても、下げ幅は小さいような気がしますが…
ということで、ネットでサラリーマンの生涯賃金について調べてみたところ、独立行政法人労働政策研究・研修機構というところが出している「ユースフル労働統計」(PDF)という資料に、
サラリーマンの生涯賃金(推計値)が出ていたので見てみたところ、確かに60歳までの賃金で比較すると、以前よりは下がっているようでした。
例えば、大学・大学院を卒業してすぐに就職し、同じ会社で定年までフルタイムで勤務した男性という条件の生涯賃金(2019年の推計値)は、
・60歳までの賃金 … 2億6,910万円
・退職金 … 1,890万円
・退職から65歳までの賃金 … 4,230万円
といった感じだったのですが、この「60歳までの賃金」と、「3億円を稼ぐ」と言われていた当時のそれとを比較すると、3,000~4,000万円くらいは下がっているということになりますからね。
ただ、今は「退職から65歳までの賃金」があるので、それも含めると、生涯賃金はほぼ横ばいということになるとは思います。5年も余計に働いてようやく横ばいと考えると、ちょっと微妙ですけど。
また、これが大卒・大学院卒ではなく、高校を卒業してすぐに就職し、同じ会社で定年までフルタイムで勤務した男性という条件の生涯賃金(2019年の推計値)となると、
・60歳までの賃金 … 2億1,280万円
・退職金 … 1,400万円
・退職から65歳までの賃金 … 3,200万円
といった感じなのですが、高卒の場合、大卒よりも4年も長く働いているわけですからね。それでこの生涯賃金というも、ちょっと微妙かなあという気がしました。
でも、以前と比べて(60歳までの)生涯賃金が下がったとは言っても、今はまだ良いほうなのかもしれませんね。例えば、今は賃金体系を見直す企業も増えているようですし、
厚生年金などの公的年金にしても、以前よりは確実に条件が悪くなっていますし、この先は、さらに条件が悪くなるかもしれないわけですし…
というか、公的年金というのは、「現役世代から年金受給世代への仕送り」みたいな制度ですから、少子高齢化によって現役世代の人数が減れば、確実に条件が悪くなりますからね。
そういったことを考えると、あと数年で定年を迎える自分の世代はまだ幸せなほうなんだろうなあと思いますし、逆に、自分よりも若い世代の人たちは、大変だろうなあと思います。
今の30代の人たちの4人に1人は結婚願望がない…といった話しも聞きますが、こういった状況では、そうなるのも当然ではないかなあという気がしますし、
そういったことが、少子高齢化に拍車をかけているのではないかという気もしますね。何だかんだ言っても、お金の不安があるという状況は良くないと思います。
あと、サラリーマンの生涯賃金の話しで思い出しましたが、少し前に、日銀総裁の年収や生涯収入といった話しが話題になっていましたよね。
まあ、マスコミが意図して話題にしたようなので、いつもの通り、やれ上級国民だとか、やれ庶民感覚がないだとかの、くだらない話しが中心になっていたようですが、
それはともかく、日本銀行の総裁の年収が3,500万円で、80歳手前まで働いて生涯賃金が11億円というのは、ちょっと少なすぎるような気がするのですがどうでしょう?
個人的には、一国の、しかも一応は先進国と言われている日本の金融政策を決める立場にいる人の年収が、3,500万円で良いのかなあと思うのですよ…
というのも、東証一部とか二部(今はプライムとかスタンダードと言うのでしたっけ?)に上場している企業の役員(社内取締役)の平均年俸が3,600万円くらいという話しですからね。
日銀総裁の年収が、民間企業の役員報酬と同じくらいというのでは、優秀な人が、どんどん民間に流れていってしまうような気がしますし、それは日本にとっても良いことではないと思うので…。
まあ、総理大臣の年間給与が4,000万円ということなので、日銀総裁の年収は、それより低く設定しないと格好がつかないということかもしれませんが、それにしてもなあと思います。
もちろん、ふつうのサラリーマンからすれば、年収3,500万円はかなりの高収入ですけどね。ただ、それでも出すべきところにはしっかり出すというふうにしないといけないと思いますし、
今回の日銀総裁の話しが典型的だと思うのですが、少なくとも、高給取りだから叩いてやろうくらいの感覚で物事を考えるのはやめたほうが良いと思いますね。
まあ、マスコミがそういった姿勢で報道するので、それに世論が流されているという面もあるとは思いますが、そんなことでは、サラリーマンの生涯賃金が右肩上がりなることもないでしょう。