知床観光船事故の教訓
4月23日に発生した知床観光船事故ですが、漁業関係者や解雇された元従業員の話しといった周辺の情報が多く報道されていることもあって、どの話しを信じるべきか迷いますね。
また、運行会社のずさんな経営を問題視する報道や、悪天候の中で出航したことを責める報道も多いように感じますが、確かに責められて当然の話しではあるものの、
ずさんな経営や悪天候と今回の事故との間に、直接的な因果関係があったのかどうかもよくわからないので、そこに注目しすぎると、視野が狭くなってしまうような気がします。
大事なのは、今後、同様の事故が起こらないようにするにはどうするべきかだと思いますので、もう少し、事故の検証や、事故から得られる教訓は何かなどに注目したほうが良いと思うのですけどね。
また、今の時期の北海道の海は、水温が5℃あるかないかくらいだそうで、万が一、海に落ちると、数分で意識を失うとのことですので、そういった知識を広めていくことも大事だろうと思います。
極端な言い方をすれば、海に落ちたら助からないというくらい危険なわけですからね。そうした知識があるだけでも、海難事故の防止につながるのではないでしょうか。
そして、そうした過酷な状況の中では、救命胴衣や、浮き輪などの救命浮器なども、気休め程度にしかならないと思っていたほうが良さそうです。
海に落ちてから救命浮器につかまっても、失神した時点で手が離れてしまうでしょうし、救命胴衣も、着用の仕方を間違うと、失神した時点で体が抜け落ちてしまうようですからね。
救命胴衣は、ただ腕を通して着ていれば良いというわけではなく、救命胴衣から出ている紐を、股の間を通して体に括りつけていないと、体から外れてしまうことがあるそうです。
ちなみに、そういった過酷な状況で遭難した場合は、体が水に濡れないようにしながら救命筏(いかだ)などに乗り移り、救助を待つというのがベストだそうです。
救命筏に乗り移ることができても、気温が低い状況で体が濡れていると、救助を待っている間に低体温症になってしまい、その状態が長時間続くと、命の危険があるということですので…
ということで、知床観光船事故から、どのような教訓を得ることができるかですが、今回の場合は、船長や社長といった個人と、運航会社という組織の二つに着目するのが良いかもしれませんね。
◆ 知識不足・理解不足・用心不足
運行会社の社長は、元陶芸家だそうで、それが突然、赤字のホテルの経営を任され、経営コンサルタントの指導のもとで黒字化したという話しがあるのですよね。※
そして、観光船の運航会社も、他人から買い取ったものとのことなので、一部の報道でも指摘されていましたが、知床の海に関しては、知識不足だったのかもしれません。
また、観光船の船長も地元の人ではなく、それまでの船長と入れ替わりで船長になったようなので、社長と同様、知床の海に関しては、知識不足があったのかもしれません。
そして、事故の当日、強風注意報と波浪注意報が出ていたにも関わらず運航を決断したのは、社長、船長ともに、状況への理解不足か、理解はあっても用心不足があったのだろうと思います。
◆ 価値観の不良・組織運営の不良
観光船事業は、人の命を預かる仕事でもありますが、もしかすると、利益優先で、安全に対する意識が低いなどの問題があったのかもしれません。
また、観光船の運航判断は船長がするということですが、運航会社の社長と船長との間の連絡体制などに問題がなかったかどうかも気になるところです。
◆ 使用の問題
運航会社に設置されていた無線のアンテナが破損していたといった報道もありましたが、そういった設備や、観光船の保守や点検が正しく行われていたかどうかも気になるところです。
また、事故当時は3メートル近い波だったそうですが、仮に整備不良があり、そうした状況でエンジンが故障して動けなくなってしまったとしたら、それが事故につながった可能性もあるような気がします。
今回は、観光船が沈んでしまったので、そのあたりのことはわからないままになってしまうかもしれませんが、今後のことを考えると、船を引き上げて調査したほうが良いのではないかと思います。
◆ 動作不良
人は、予想外の状況になるとパニックを起こすことがありますが、事故に至るまでの船長の操船に問題がなかったかどうかも気になるところです。今となっては確かめようのないことですけどね。
といった感じで、自分が思いついたことを書いてみましたが、こうしたことから、今回の知床観光船事故の教訓を得るということになるのではないかと思います。
また、今回のような大きな事故の場合、当然のことながら、事故の結果も大きくなってしまいますよね。もっとも大きな結果は、多くの人の命が奪われたことだと思いますが、
社会に与える影響も大きいですよね。例えば、運行会社の経営が行き詰まるということもそうでしょうし、知床の観光事業全体に与える影響も大きいと思います。
また、大きな事故が起こると、人の行動も変化することがありますので、もしかすると、知床以外で運行している観光船や遊覧船といった事業にも影響が出るかもしれません。
あと、個人的に気になるのは、事故を起こした観光船に、衛星携帯電話やGPSが積まれていて、それが早いタイミングで使用されていれば、救助が可能だったのではないかということですね。
どちらの機器も法律上の搭載義務はないということですが、観光船や遊覧船といった乗客を乗せる船については、義務化しておいたほうが良かったのではないかという気がしました。
また、同様に、ある程度の大きさの観光船には、救命筏の設置も義務付けたほうが良いのではないかという気もしますね。特に、知床のような寒い地域では、必須の設備ではないかと思います。