論理的思考力を身につけるには?
論理に基づいて思考する能力のことを「論理的思考力」(logical thinking)と言います。具体的には、道理や筋道に則った思考によって結論を導いたり、あるいは、複雑な事柄を分かりやすく説明できる能力のことです。
■ 論理的思考力があると便利
論理的思考力を身につけておくと、たくさんの情報や複雑な状況を効率よく整理することができ、それによって現状の問題点や将来の課題を推測したり、問題点に対する解決策を導き出すことがができるようになります。
また、原因と結果の因果関係を探すときなどにも、論理的思考力が役立ちます。
■ 論理的思考力を身につけるには
論理的思考力を身につけるには、以下の3つを意識しておくと良いでしょう。
1. 「なぜ?」を習慣にする
論理的思考力を身につけるには、「筋道を立てて考えることを習慣にする」ことが大切です。そのためには、常に「なぜだろう?」と、原因や理由を考えるようにすると良いでしょう。
また、
なぜ競合他社のこの商品はヒットしたのか
→ 従来はこの商品を買わなかった人が買うようになった
どうして買うようになったのか
→ ・・・
といったように、「なぜ?」を繰り返して考えることも大切です。最低3回程度は、「なぜ?」を繰り返してみると良いかもしれません。
2. 考えを紙に書き出す
頭の中で考えるだけでなく、それを紙に書き出すようにします。そうすることで、本当に「筋道を立てて考える」ことができているか、「考えに漏れがないか」、「考えに矛盾はないか」などがわかるようになります。
また、その際、ビジネスフレームワークを活用してみるのも良いと思います。こうしたツールを使うと、効率よく情報や状況を整理し、現状を分析することができます。
例えば、「ロジックツリー」と呼ばれるフレームワークを使用すると、考え漏れ(または重複)が無くなりますし、いくつかの切り口で複数のロジックツリーを書いてみると、様々な視点で物事を見ることができると思います。
3. 他人の知恵を借りる
自分だけでは考えに漏れや矛盾があっても気づけないかもしれませんし、そもそも、人間は自分の能力の範囲でしか考えることができません。自分の知恵に限界を感じたら、他人の知恵に頼ることも必要です。
また、情報や状況について、他人に対して簡潔で分かりやすく伝えることも、論理的思考力を身につけるための訓練になりますので、積極的に周囲の人に話しをしてみるのも良いかもしれません。
■ 論理的思考に役立つ「ビジネスフレームワーク」
多くの情報や複雑な状況を整理し、全体を俯瞰したい場合に用いられるツールに「ビジネスフレームワーク」があります。
ビジネスフレームワークによって情報や状況を効率よく整理することができれば、それだけ仕事のスピードが上がりますし、自分の頭の中を整理したり、他人に対して分かりやすい説明ができるようになります。
また、ビジネスフレームワークにはたくさんの種類がありますが、最低限「これだけは覚えておいたほうが良い」というものは次の二つではないかと思います。
◆ ロジックツリー
ロジックツリーとは、MECE(漏れなく重複なく)を意識して、上位の概念を下位の概念に分解していく際に用いられるビジネスフレームワークです。
何らかの問題が生じた際、その問題の本質的な部分はどこかを絞り込む場合(原因究明)や、本質的な部分に対して解決策を考える場合(問題解決)などに使用されます。
※ MECE(ミーシー) … Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive
また、ロジックツリーは「原因究明」や「問題解決」以外に、以下のような「要素分解」的なことにも利用できます。
◆ マトリックス
マトリックスとは、行と列で表現された表で、2行×2列、あるいは3行×3列の表が使われることが多く、状況を整理したり、観点が正しいかどうかを見るような場合に用いられるビジネスフレームワークです。
このように、重要性と緊急性の高低で優先順位を決めるマトリックスなどが有名ですね。
また、以下のマトリックスはPPMと呼ばれており、コンサルティング会社のボストン・ コンサルティング・グループが提唱したものです。
「市場成長率」「市場におけるシェア」の2軸から、事業を「花形」「問題児」「負け犬」「カネのなる木」に分類し、どこに資源を配分するかを検討するために用いられるビジネスフレームワークです。
これ以外にも、以下のようなマトリックスがあります。
そして、ロジックツリーやマトリックス以外では、「3C」や「7S」、「PEST」や「SWOT」といったフレームワークがあります。(これらは「3C分析」「7S分析」「PEST分析」「SWOT分析」と呼ばれる場合もあります)
■ 3C
「3C」は、経営コンサルタントの大前研一さんが考案したと言われているコンセプトで、外部環境や競合他社の状況から、事業のKSF(Key Success Factors:成功要因)を導き出し、事業を成功に導くために用いられるフレームワークです。
Customer:市場・顧客
Competitor:競合
Company:自社
の3つの視点で分析を行います。
マーケティングの本質は、最も効率的な施策に資源を集中させ、顧客に選ばれ続け、売上や目的を達成できる仕組みを作り上げることですが、そのためには、「市場・顧客」「競合」「自社」の3者の関係性を明確にする必要があります。
■ 7S
「7S」は、マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱したモデルで、組織の全体像と要素間の連携を捉えるために有用なフレームワークです。組織の要素を7つのSで表し、それぞれの関係性を明らかにすることができます。
・ハードのS (組織に関するもの)
(1)戦略:競争優位性を維持するための事業の方向性
(2)組織:組織の形態や構造
(3)システム:人事評価や情報の流れ、会計制度などの組織の仕組み
・ソフトのS (人に関するもの)
(4)価値観:社員の間で共通認識になっている会社の価値観
(5)スキル:営業力や技術力、マーケティング力といった組織の能力
(6)人材:社員や経営者などの個々の人材の能力
(7)スタイル:社風や組織文化
■ PEST
「PEST」は、主に経営戦略や海外戦略などの策定や、マーケティングを行う際に使用するフレームワークで、自社を取り巻くマクロ環境が、現在または将来にどのような影響を与えるかを把握・予測するための手法です。
Politics:政治
Economy:経済
Society:社会
Technology:技術
の4つの頭文字で「PEST」です。
■ SWOT
「SWOT」は、組織(個人)のプロジェクトやベンチャービジネスなどにおいて、外部環境や内部環境を「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つのカテゴリーで分析し、事業環境の変化に対応した経営資源の最適活用を図るためのフレームワークです。
Strengths:強み
Weaknesses:弱み
Opportunities:機会
Threats:脅威
の4つの頭文字で「SWOT」です。